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「宇宙一辛いラーメン ほたる」by「やぐら亭」初台

2012. 1. 26 Thursday

http://tabelog.com/tokyo/A1318/A131807/13006609/

 

*** 写真 & 文章 by 次女 Asuka ***

 

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1. Experience 体験
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困ったのが1から10まである『ほたる』のレベル決め。一緒に食べに行こうと決めたときはあまり知識のなかったチワコちゃんと私、初心者はレベル5までしか頼めないと聞き、じゃあ勿論5でしょう!と気楽なもの。
けれど、何人かのブログで奮戦記を読んでいた私は、ちょっと待てよと考えた。というのは、私は激辛での苦痛を今まで何回か味わっているからだ。ソースを度を超して使用してしまい、胃が痛くなるだけでなく、立って歩く事が出来ない事もあった。この胃の痛みが尋常じゃなく苦しい。どうやら『ほたる』で救急車で運ばれた激辛の兵が何人もいるらしい。オフ会で激辛王が、辛いもので死んだ人は存在する事を教えてくれた。まとわりつく、危険感。


いつものように自分の予定の1つとしてmixiのカレンダーに『ほたる予定』を書き込むと、コメントで色々な情報が友達から入って来た。有り難い。始めは『大丈夫でしょ』とオキラクだった私も、そのうち顔が青ざめてきた。
『ほたる』を食べたときの症状、後遺症 --- うずくまる、のたうちまわる、胃痙攣、意識朦朧、目眩、強制リバース、救急車、意識失う ---  これらは全く『次元の違う』辛さと1人が教えてくれる。
これはどう考えてもレベル5は自殺行為。3でも完食をするにはかなりの苦しみを覚悟しなくては。しかも次の日は仕事を休めない。完食するには1か2なのか…


当日の朝まで決められずにいて、仕事に向かう途中ふと思った。完食にこだわる必要ってあるかしら?確かに激辛挑戦ということであれば完食して『勝ちたい』という思いはある。でも今回私が望んでいるものって何かしら。
最終的に、完食達成よりも恐いもの見たさの思いが勝つ。多くの兵が玉砕する次元の違いって、どういうものなのか。

夜に待ち合わせの初台駅でチワコちゃんに会い、レベルどうする?と聞くと、5の頑な決心に変わりはない。やぐら亭に歩いて行く途中のおしゃべりで、彼女が激辛に因る『苦しみ』を一度も味わっていない事を知った。成る程知らなければ怖くない。彼女と一緒にレベル5を経験しようと決心した私、実はこの頃には緊張と恐怖で震え始めていた。知らない彼女に、充分あり得る胃の痛みや苦しみを説明し、レベル5の完食はほぼ不可能なのだから決して無理をしない事、痛みは時間差で来るのだからゆっくり体の状態と相談しながらのペースで食べるように、などを自分に言い聞かせる意味で話す。

地図を頼りに『やぐら亭』発見。去年の10月に改装した事は知っていたが、そのデザインの良さに驚く。美しく生まれ変わった場所はカフェのような洗練されたスタイルと色。デザイン、素材、配色、家具、建具と、店づくりのプロの1人として、これはいい評価を与える!

 

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外からお店のご主人が見える。私の緊張感に拍車がかかる。

 

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端の小さなテーブルに落ち着いたのがおよそ7:30PM。店内には男性客1人だけ。お店の奥さんがコップに注いだ水をテーブルに持ってきてくれる。
『ほたるのレベル5を麺半分で2つ、お願いします。』震える声で私が言う。
『レベル5、ですか?』
その問いに、心の中でうわーごめんなさいと思う。出来ない事を遂に頼んでしまった。
脂汗を感じながらお決まりのメニュー撮影をするが、どこを撮るかの集中力はなし。

 

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チワコちゃんはわくわく、私はどきどきしながら待つ事5分くらいだろうか、黒い大きなどんぶりがテーブルに運ばれる。
『ほたる』の名前の由来である、運ばれてきたときに表面で踊る青白い炎は、緊張で汗ばんだ手で操るカメラではうまく捉える事が出来なかった。

 

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ネットで何度も眺めた事のある漆黒の、まるで無限の宇宙を感じさせる液体。その中できらきら光り輝く赤く細かい物体が、生ハバネロ。

 

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いざ、開戦。

 

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まずはその赤いハバネロがしつこく絡み付いた、生ハバネロが練り込まれているという麺を少々口の中に。
美味しい。味噌の香りと濃厚な素材の凝縮が口の中に広がる。3口程ゆっくり入れる。
お、ひょっとしたらいけるかも?と思ったその直後、唇から喉に渡って一気に襲うビリビリ感。おおお~!これは凄い、辛さに対して慣れて鈍感になっている口と舌の神経が忘れかけていたこの痺れ。特に喉の奥のびりびりが激しくむせて咳き込みたい気がするが、咳き込んだら入れた空気でますます悪化しそうだから怖くて出来ない。
『成る程こういう事ね!』
感嘆の声が私の口から漏れる。
10口くらい進み、チワコちゃんはどうしているだろうと向かいに目をやると、彼女の目が真っ赤で涙が溢れかけているように見える。瞬時見つめ合い、思わず『あはははは』と笑い合うしかなかった。完食が無理な事は、2人ともこの時点で悟っていた。
そのままゆっくり食べ進み、始めから少なめにしてもらった麺を半分程食べた辺りだろうか、体の異常さに気付いたのは。
普段の自分の食事でも、デスソースたっぷり食べた後は大抵少々の寒気を感じる。2~5分くらい、ぶるっと背筋にくるというか。その10倍の激しさの寒気が手に背中に脚に襲いかかり始める。太腿から足下にかけてガクガクと震え始めコントロール出来ない。普段良過ぎる代謝で温かい私の両手が不気味に冷たい。
『すいません、温かいお茶を下さい』
と思わず奥さんに頼んだが、用意していないとの事。それもそうだな。冷め始めているがまだ温かいどんぶりを抱えて手を温めながら、5分休憩。
普段でもデスソースを時々度を超えて使ってしまう事があり、そんな時は直後の寒気も結構酷く、その後続くのが胃痛。この突き刺さるような胃痛が結構苦しい。動けない痛み。立つなんてとんでもない、体を2つに折り曲げないとどうしようもないつらさ。過去にオフィスで思わず5分くらいデスクの前でうずくまってしまった事、自宅でベッドの上で丸くなってしまった事が数回ある。
と、言う事は。
普段の10倍の寒気という事は、この後10倍の胃痛に襲われるのか。
震えが止まって落ち着いてからも少し様子を見る。胃に痛みを感じないので、そのまま麺の攻略を再開。スープは一口しかいってない。時々逃げるのはハバネロの影響をほとんど被っていないナルトとチャーシュー。
2時間位戦えば、ひょっとして麺だけでも攻略出来るのかと勘違いし始めた頃、やってきました、あの痛み。
キリキリキリキリ。
胃をえぐって穴を開けるような鋭いセンセーション。ああ、これはいかん。途端に箸を置き、じっとして痛みに耐える。が、体を二つ折りにせずにはいられないつらさだったので、トイレに入って座り込む。吐きこそしなかったが動けない。士気が一気に落ちる。苦しい。後悔感に襲われる。
暫くそこで体を曲げてじっとしていたが、混み始めた店内、トイレを占拠出来ないと思い、しぶしぶテーブルに戻る。
チワコちゃんはまだ胃痛は感じていないというが、喉の痺れがかなりつらそう。目をまっ赤にしながら手が水の入ったコップに伸びる…. 『駄目ぇ~っ!!』その手を抑え、水は自殺行為である事を告げる。つらさから何かに逃げたいのは理解出来るが、水でそのつらさは和らぐどころか倍増する。
と、その後、『いたたたたたたた…』チワコちゃんにもやってきた、胃の痛み。
どろりと冷え始めた漆黒の宇宙を眺め、どうせ完食出来ないのならではどこまで進んだらいいのか、ぼーっと考える。そう言えば目眩がして、何となく意識が朦朧としているのはきっと気のせいではないのだろう。

その時の器の中。

 

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チワコちゃんのも同じような状況。

 

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復活した気がして、もやしを中心に更に箸を進める。その頃にはもやしにもハバネロエキスがすっかり浸透して、ハバネロ漬けになっている。もう美味しくない。ハバネロの酸っぱい痛さだけが鼻と喉に絡み付く。そのままつまんでいると、またやって来るキリキリの胃痛。何でこんな苦しみに態々自分から飛び込んで行くのか、その愚かさ加減に我ながら呆れる。
胃が、体が、このハバネロの物体を拒否している事を悟り、箸を置く。ドクターストップである。完食が可能ならもう少し無理を考えるかもしれないが、そろそろ自力で自宅に帰らなければいけない事実に意識が走り始める。次の日が休みだったらせめて麺完食は達成したいかなぁ。でもそうすればうちに帰れる保障はないよなぁ。
これは『激辛』の世界ではない。『激痛』または『激苦』、これが、次元の違いって事ね。
おしまいにしよう。
もう立ってトイレにいく事も出来ず、その場で唸りながら体を折り曲げ動けない。そんな状況を普通の店でやったら大事であるが、見慣れているに違いない奥さんは何事もないように私の背中を通り過ぎ、ご主人も自分の作業を続けている。
全く、凄い世界だなぁ…
落ち着いてから、『辛いもので胃が痛くなるってものすごく痛いんですねー!』と顔を歪めながら笑ってストップしたチワコちゃんと向き合い、もうやめようと話し合う。食べた量は私とほぼ同じ。私は、少しゆっくりしていけば胃痛がこれより悪化する事はないだろうと経験上で知っていたが、自宅まで新宿から50分程かかるというCちゃん、初めての痛みに恐怖を抱いて店を出る決意をするまでは結構時間がかかったので、長い事おしゃべりして気付くと時計は10:00PMを回っていた。


最終結果。この下に不気味にたっぷり沈んでいるハバネロ達。

 

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負けました。

 

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始めから分かっていても、やはり負けたのは悔しい。が、ものすごい経験をしたという楽しい一晩になった。彼女も私も 1人ラーメンが出来なく、そして2人とも、白い目で見られる事なく一緒に同じレベルの激辛を楽しめる女友達を探していた事が分かり、初台駅までの帰り道途中のコンビニで買ったヨーグルトドリンクで胃にお疲れ様をしてあげながら、次回は新宿の中本で『北極辛さ5倍』を一緒に食べる約束を。

 

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2. Aftermath 後遺症
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新宿駅で手を振って別れる頃は2人とも笑顔。お互い大丈夫だろうと安心して、自宅に着く。帰ってからラップトップを開きメールチェック&早速の写真整理を始める。体調が復活すると思い出したように出て来るのが空腹感。麺少なめでスープは殆ど手を付けず完食していないのだから、お腹が空いているのは当然だ。残りご飯を温め、鮭の小さな一切れを焼き、夜中過ぎにプチ夜食。そろそろチワコちゃんも自宅に辿り着いたかな、と、メールを入れてみる。片付けて明日の準備を始め、かなり寒い夜だったので熱いお風呂に入ろうとお湯をバスタブに溜め始める頃。
再び襲う急激な胃痛。
鮭の塩が傷を負った胃を攻撃しているようだ。夜食をとらずに大事にしていれば良かった、しまった!!
うううううううううう…
バスタブの中で体を延ばし、熱いお湯の下で横向きに横たわってじっと動けなくなる私の頭の中でずっと鳴り響いているのは。
『私ってアホだ 私ってアホだ 私ってアホだ 私ってアホだ 私ってアホだ』
そしてその彼方向こうで聞こえるのが。『これって酒好きの二日酔いと全く同じだな…』
チワコちゃんからの返信はない。きっともう眠っているのだろうが、何だか胸騒ぎもする。ちゃんと帰れただろうか。お風呂からあがり、ベッドの中でもまだ攻撃し続ける胃痛を両手で抱えながら、疲労感のまどろみに包まれて眠りについた。
翌朝、覚悟をしていたトイレ地獄は全くなかった。胃にどんよりとした慢性的な鈍さは感じたが、痛みではなく疲労感。いつものように朝のニュースを聞きながらの筋トレをこなし、ある意味爽快感も感じ始める。そうなると調子良く出てくるのは、昨日はもっと無理が出来た筈だという後悔。最後には体全体で拒絶したハバネロの酸っぱい香りが、今では恋しくさえ思う。キッチンシンクに置いている、料理に使っている鷹の爪の詰まったガラス瓶を見て、つばが出てゴクリ。
やっぱり二日酔いが過ぎ去った酒飲みと全く同じじゃん…
そんな事を思っている時、携帯にチワコちゃんからメールが入っている事に気が付いた。
『いい経験出来ました。そしてまた行きたいです!』

ニヤリ。

 

 
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